大田区蒲田のおふくろの味ラーメン「上弦の月」
東京で最も地元感がある街(個人的に)、蒲田。
そんな蒲田に僕が上京した2007年から足繁く通っていた、東京のおふくろの味とも言えるラーメン屋がある。
火曜、木曜、土日祝が休みという週休4日スタイルでなかなか行くのが難しいが、18時〜25時ごろまで営業しているので夜ご飯として訪問するのが主だったが飲み終わった後に行ったりもしていた。
かつては主にネギを刻んだり配膳を行うおばあさんと、主にスープと麺を見ている女性店主の2人できりもりしていた。
その2人の接客がとにかく丁寧でこちらが恐縮してしまうくらい。
「寒い中お待たせしてすみません」
「席を何度も動いてもらってすみません」
「どんぶり片付けていただきありがとうございます」
「本当にいつもありがとうございます」
一度の来店だけでこのくらいすみませんとありがとうございますを言ってくれるお店はたぶんない。
しかもその一言が元気よく、明るく、また来ようと接客だけで思わせてくれていた。
熟成鶏醤油ラーメンをうたうラーメンは僕の知る限り唯一無二の味。
(写真は2010年秋に撮影したもの、チャーシュー麺煮玉子ネギマシ麺かため味濃い目)
圧倒的魚粉、むしろ鰹節の香りと動物系のよく煮込まれたどろっとした濃厚さ。
麺は大栄食品の太麺を使っていてうまいのだが、固めにしないと少々くたっとする位に時と場合によればブレる。
いかんせん2人で狭い店内をきりもりしていたので提供までに時間がかかるのでどうしても麺も茹ですぎたり茹でが足りなかったりとかなりブレるのだ。
それに海苔とほうれん草がデフォルトで入っている。
卓上にはすりおろしニンニク、紅生姜、ポン酢、黒胡椒、醤油が準備されていた。
個人的にニンニクを大量に投入し、黒胡椒でパンチを効かせつつ、後半はポン酢を回し入れアッサリしめるのが個人的ジャスティスだった。
味にはブレがあるし、スープはぬるい。
でもどこかクセになって、接客もクセになり、また行こうと定期的に思わせてくれる中毒性があるのが上弦の月だった。
そう、だった。
僕も2012年から社会人になり、大田区からさいたまに移り住んだためなかなか顔を出せていなかったが、去年か一昨年あたりからおばあさんが高齢のためか姿を消し、ついに女店主ひとりでの営業となった。
それ以降、ただでさえきりもりするのが大変だったため、回転が悪かった上弦の月が更に拍車をかけて回転が悪くなった。
それでもひとりになられて暫くは元気のいい接客は健在でやられていた。
が、今日、仕事が川崎で終わったためひとりで来訪した所、様子が違った。
まず仕込みにも時間がかかるようになったのか、開店15分前に先頭で並び始めたのにも関わらず、店がオープンしたのは18:30と30分遅れだった。
しかもいつもの明るさと元気の良さが影を潜めている。
もちろん他のラーメン店に比べては十分丁寧な接客であるのには違いないのだが、かつての上弦の月に慣れていた身からすると「体調とか大丈夫かな?」と心配になるレベルである。
肝心のラーメン自体についてだが、麺は浅草開花楼のものに変わっていた。
何度も味のマイナーチェンジを繰り返して来ている上弦の月だが麺が変わったのは僕が知る限りでは初めて?かもしれない。
2010年の写真と同じくチャーシュー麺煮玉子トッピングを頼んだが、ほうれん草が姿を消していた。
また卓上にはすりおろしニンニクと一味のみで他の調味料類はなくなっていた。
また、値段がやや値上がりしていた(50円?)。
味は、美味い。
さほどかつてとの違いは感じない。
上弦の月のラーメンだ。
唯一無二、この場に来ないと味わえず、また来たいと思わせる中毒性があるラーメンだ。
だが、今日は接客、卓上の雰囲気、ラーメン全体から「かつての上弦の月」の面影は薄まり、心配な気持ちになった。
女店主は大丈夫かな?
体調を崩してないのかな?
そもそもこの店をひとりできりもりしていくことを続けられるのかな?
接客は十分丁寧だけどかつての面影を思い出すとどこかさみしくなるな。
などなど。
僕は上弦の月が大好きだ。
いつも開店すぐでも混むから少なくとも15分前には着くよう電車で、自転車で暑い日も寒い日も通った。
今は無くなってしまった大きな提灯も、かつてからボロボロで自分が社会人になったらプレゼントできたらな、とかとも思っていた(なかなか通えなくなったので結局やらずに今を迎えてしまっている)。
完食後、店を出る際にはじめて「『いつも』ありがとうございます」と言ってもらえた時は些細なことだが嬉しかった。
いくら忙しくてもいつも変わらない神様というよりも仏様の様な接客。
小さな子どもからお年寄りまで地元民に愛される名店。
そんな上弦の月が本当に大好きだ。
色々な事情があるだろうし、無理をして欲しいなんて微塵も思わない。
ただ本当に少し疲れた様に感じられた女店主が本当に気がかりになった。
人手不足もあって難しいとは思うが、ぜひ体調には気をつけて、あの上弦の月を変わらずきりもりしていってほしい。
また、食べに行きます。