seikousisanの日記

食べたり音楽(ロキノン・ももクロ他アイドル)だったり都内近辺の行く場所が多いと思います

作家の話

ブログを更新しなさすぎたので、自分のゼミブログからの引用。
明日からちゃんと更新して行けるようにします。

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『リング』や『楽園』の作者である鈴木光司さんにゼミに来ていただいた。

率直な感想は話が本当に面白い(interesting的な意味で)なぁということだ。
今まで本に携わることを本業とする方には鈴木さんを含め2人しかお会いしたことがないが、その両名とも話が実に面白い。
この両名に共通する点は、何かの話をする際に、自分の体験がベースにありつつも、歴史や文化的事実を引用しながらストーリーとして明朗に話して行くことだ。
「学習とは規則性の発見である。」との話の中にも、このエキスがつまっていた。
昔から人類はまず毎年ある時期に洪水が起こっていることを観察して気付き、暦をつくった。
暦をつくることで、次はいつに洪水が起こるか予測することができ、農作業や治水行事にいかすことができる。
こうして自然現象の規則性を発見して行くことを学習することで、未来を予測し、今できることを考えて人は学習してきたのだ、と。

自分の体験だけの語りになれば、自分語りとして時には人に不快感を与えることになるかもしれない。
また、他のことからの引用だけになれば実体験も伴っておらず、何もその人である必要性も感じない。
そして話し方の明朗さ加減、ここも重要だと思う。
よく説教臭かったり、自分の意見だけを伝えたいだけで相手の意見に否定的に終始しながら話す人もいるが、こういう話し方は聞いてる相手のことを考えていないのでよくないなぁと最近よく感じる。
とにかく、この3つを組み合わせながらストーリーを作って行く、そしてそれをただ書にするだけでなく語ることでも十分に伝えることができる。
ここは僕も見習うべく、自分の体験、感じたことを大事にしながらももっと深くインプットも続けて行くべきなのだろうなと再認識した。

そして、僕がゼミ中に質問していただいた「インターネット時代の創作における評価」についても面白い話を聞くことができた。
UGCにおけるコメントの編集的効果の可能性』という論文を昨年、ゼミで書いたときからリアル世界で権威のある編集者やプロの作家、講師の方々と、ネット世界にいる有象無象の群衆。
果たして有象無象の群衆がプロと同じ役割を担うことができないかと考え続けていた。
今年の8月に出た『バクマン。』という漫画の14巻では、ネットの世界から見つけてきた優秀なアイデアを出す顔も名前も知らない仲間と創作活動を続ける少年が、最終的にはぼろが出て失敗をするというエピソードがあった。
結局は個人だけの力では、よっぽどのファシリテーション・マネジメント能力がない限り、ネットの中で評価を得、またそこから寄せられた情報をもとに創作をしていっても、リアルの場を共有しながら編集者・作家が一体となって作品を作って行く努力を続けることには勝てないということが描かれていた。
鈴木さんがおっしゃっていたこともその内容に近かった。

鈴木さんが作家になると決心がついたのは、シナリオスクールで講師の方だけでなく、生徒の方々の評価もいいと肌感覚を持って感じることができたからだとおっしゃっていた。
リアルの場を共有することによって、その人のシナリオを評価する口調、まなざし、身振りなどまで感じることができ、そういったリアルでしか出せない空気感も一歩を踏み出す勇気につながったのだろう。
今年の三田祭でPARTYの伊藤直樹さんが行っていた講演の中でも、同じ様なことをおっしゃっていた。

「いいアイデアというものは周りの人を見ればわかる。そのアイデアを聞いている周りの人の目が輝いているし、その話も盛り上がる。」

だからこそ鈴木さんは、「ネット上でヒットした作家達が単発で終わり、長続きすることが稀な現状を受けて、もっとリアルの場で交流する場、ソーシャルネットをリアルに持ってくる場を作りたい。」とおっしゃっていた。
僕は2年、3年、4年のときと3年間、主にインターネットというものがテーマに絡む論文を執筆したし、インターネットで面白いことが起きていることを知ることも体験することも好きだ。
しかし、やはりリアルの場での盛り上がり、交流以上に人の心を動かすものはないと感じている。

これからの時代、リアルの場で生じていたものがインターネット、デジタルに変換されて行く動きは止められないと思う。
そこをただ単にデジタルにしましたよーというのではリアルでの「きもち」というものが起き去られていることが現状のサービスを見ていても多々ある。
リアルでの「きもち」をしっかりとデジタルに適合したかたちで変換して、共にデジタル上で楽しむことができる時代がくれば幸せだなぁと思う。

何はともあれ、鈴木さん、面白い話をどうもありがとうございました。